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〜〜〜茂さんの提案・ゴミ、拾い行こか



〜〜〜茂さんの提案・ゴミ、拾い行こか



 秘密基地の壁にトタンの装甲版を張り付けて太陽は南南西。
 遅めの食事を口に運びながら俺達はたあいのない話をしていた。

 何度眺めても基地はピカピカの銀色のトタンに包まれていて・・・萌える。
 トタンには断熱効果と防音効果もあるそうだ。
 この辺りは夜は冷え込むし、ダンボールの壁は雨の衝撃を吸収して少しうるさい。

 ・・・・・・立派な基地ができたな。
 喜び噛み締めてご飯に合わないガリを口に運んだ。

【茂】ゴミ、拾い行こか。

【陽司】は?

 突然そんなことを言い出した。
 その表情は大マジで、ツッコミを戸惑う。

【陽司】・・・ボランティアですか?

【茂】ははっ、違う違う。

 いつのまにか神妙な表情をしていたようだ。
 茂さんに笑われてしまった。

【茂】いやさ、せっかく基地が広いんだし何か拾ってこない?

【月子】何かって?

【茂】ん〜〜実は昨晩友達に携帯で連絡したらさ。発電機買わないか?な〜〜んて言われちゃって。

 おお、発電機!
 ・・・って、高いんじゃ。

【茂】テレビとか電力やたら消費するのはダメだけど、ラジオとかぐらいなら欲しいじゃない?

 ラジオかぁ。
 確かに月子が寝ちゃうと夜中ヒマだしなぁ・・・・・・欲しい。

【月子】うん。

【茂】だから拾ってこよう。粗大ゴミ置き場から。

【陽司】それって・・・ちょっと恥ずかしい、ような。

【茂】そんなことナイナイ。基本的にちょっと弄ればまだ使えたりするもんなんだから、まだ使えるなら使って当然だろ?

【陽司】う〜ん。

 それはわかるんだけどなぁ・・・。
 月子の姿をうかがうと―――黙々とメシを食ってる。
 意義無し・・・ってことだよなぁ。

【茂】ま、良い経験さ。食べ終わったら行こう。

【月子】わかった。

 ま、こんな生活してるんだし、この際プライドは捨てなきゃな・・・。
 ラジオ聞きたいし・・・。

【陽司】わかった。

【茂】そうかい。じゃ決定。

 少し前の雨の日とか、月子と基地に閉じ込められたときがあった。
 もう、そのときは退屈で退屈で・・・
 それを紛らわすために月子と話して話して、話す内容が無くなるまで話しまくって・・・
 最後には「しりとり」「古今東西」「にらめっこ」「指相撲」・・・なんでもやった。

 よく考えたらあんな目にあうぐらいなら少しぐらいの羞恥心なんてなんだ。
 上等じゃないか。

【月子】陽司・・・箸止まってる・・・。

【陽司】・・・っと、悪ぃ。

【茂】さっさと食って行こう。

【陽司】ええ。

 飯盒(はんごう)の中に味噌汁をブチ込んで全部腹に納めた。

【月子】下品・・・。

【茂】兄さんソレは邪道だろぉ。

 何と言われようとこれはこれで美味い。

 ・
 ・
 ・

【茂】・・・・・・で、夢の宝島へ到着!ってね。

【陽司】誰に向かって言ってるんですか・・・

【茂】ベタなのも僕はアリだと思うんだよね。だってイチイチ説明すんのも、読むのも、メンド臭いじゃん。

【陽司】・・・・・・・・・・・・。

 まあ、茂さんが変なのはいつものこと。
 いまさら気に止める必要なんてないか。

 食事を終えて山を下りて、そして温泉街を横切って川沿いに堤防に登って・・・
 そこから一直線に俺達は温泉街と別の空気漂う、住宅街のゴミ置き場の前にまで来ていた。

 ・・・まったく何者なんだろう。
 俺達をここまでエスコートした犯人は飄々(ひょうひょう)と早速その粗大ゴミを漁(あさ)り始める。
 ・・・・・・間髪入れずその隣に月子が割って入った。・・・ほんのわずかな躊躇(ちゅうちょ)も見せず。
 時々この女が疑わしく感じる。

 って、思考がそれてる。
 俺も恥ずかしいけど手伝おう・・・。

【茂】おっ・・・エロ本みっけ。ほれ、ようちゃんとっとけ、そーいう年頃だろ?

 俺の足元に刺激的な物体が飛んできた。
 ・・・・・・・・・思いっきりグリグリと踏み潰してやる。

【茂】ああっ!ようちゃっっ、お前なんてことを!

【陽司】うるせえ!この不良中年!

【茂】ああ・・・・・・後で読むつもりだったのになぁ・・・。

【月子】残念・・・。

【陽司】お前もかよっっ!

 ったく、どーしてコイツらはそーいうのが好きかね・・・。
 わけわからん。
 踏み潰したエロ本をそっと横目でのぞいてみて・・・。

【月子】あ・・・。

【茂】おっ。

 視線を戻すと月子の退かしたカーペットの下にどでかい謎の箱。
 木製で変なダイヤルが二つ付いてて・・・
 う〜ん、どこかで見たことがあるような・・・。

【茂】うわ・・・・・・すげぇ・・・。

 何が?
 俺も月子も茂さんの顔をのぞいて、その動揺とも驚愕とも見れる表情を見つめる。

【月子】何なの・・・?

【茂】アンティークラジオだよ!

【陽司】何ですかソレ?

【月子】食べれる・・・?

 わけないだろ・・・。

【茂】ん〜〜言いようによっちゃ食べれるかな。

 なに!?

【茂】見かけの型からして骨董品屋に売れば・・・・・・うん、これは壊れてても5万以上で買ってくれるはず・・・・・・本物だったら。

 このガラクタが?
 ・・・・・・物好きってのはいるもんだな。

【月子】おお、お宝・・・。

【陽司】じゃあ売ってお金に・・・

【茂】ヤダぁぃ!

 ・・・・・・・・・・・・・・・。
 やだぁぃって・・・子供ですか、アンタは。

【茂】これは持って帰る!決めた!

【陽司】別にイイですけど・・・かなり重そうですよ、ソレ。

 縦横奥行き、ざっと50cmぐらいあるだろうか。
 なんというか・・・姿そのもので技術の進歩を語っているというか・・・・・・とにかく持って帰るのはホネだ。

【月子】シゲちゃん変なの好きだね。

【茂】変なのじゃないもんっ!コレがイイんだよっ!こ、こここ、この上品な木目肌・・・どっしりとした重量感・・・ステキ・・・・・・。

 イイ年した中年がゴミに頬摺り寄せて抱きつくのは如何(いかが)なものか。

【陽司】わ、わかりましたよ、だから止めてください、恥ずかしいですって!

【茂】基地まで手伝ってくれるかい・・・?(半泣き)

 げ・・・・・・って、うわ・・・今、知らないオバちゃん通った。
 恥ずかしっ!

【陽司】わかりました、わかりましたってば!

【月子】ぷっ・・・。

【陽司】ソコも笑ってないで何とかしろよっっ!

【月子】愉快・・・。

【陽司】愉快じゃねえ〜〜〜恥ずかしいっての!

 ちくしょう・・・最悪だ、このコンビ。

【月子】ん・・・・・・シゲちゃん、帰ろ。

【茂】・・・・・・・・・・・・うん。(甘える子供風)

 袖(そで)で涙を拭って月子に甘える。

 おっさん・・・。
 もうイイ年なんだから・・・な?
 わかるだろ?

【茂】よし!じゃあ早速運ぶか。

 やっと元に戻る。
 いつのも人懐っこい表情を浮かべて・・・準備OK、アンティークラジオの片側に両手を添え興奮気味の瞳で俺を見る。
 フンフンと荒い鼻息。

 ・・・・・・・・・・・・。
 はぁ・・・。
 まったく・・・疲れるなぁ。
 渋々俺もそのガラクタに手を添えた。


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