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〜〜〜正しいマックの使い方



〜〜〜正しいマックの使い方



【茂】お姉さん、ハッピーセット40個。

 え!?
 時間帯もあってわりと空いてる店内。
 注文は茂さんにまかせて、さて・・・ぐへへ、早速陽司くんとステディなトークを・・・♪(ヨダレ)

 ・・・と、思った矢先だった。

【店員】え・・・?・・・・・・・・・え?・・・・・・え?

 あ、よく見たらそのレジで接客してるの学校の友達だ。
 とっさに座ってる椅子の下に隠れようとしたけど、ぐふ・・・遺憾なことに目が合ってしまう。最悪だ。

【月子】友達・・・?

【葉鈴】うう・・・聞かないで・・・。

 恥ずかしい・・・。
 とにかく恥ずかしい・・・色んな意味で。

【茂】だからハッピーセット40個だ。今すぐ!

 意味もなくカウンターを叩く。
 恥ずかしい。

【店員】あ、あの・・・そ、それは・・・・・・お、お客様?

【茂】出せるのか!出せないのか!ハッキリしてもらおう!

 また叩く。

【店員】う・・・・・・て、店長ぉ〜〜!

 あたしだったらヤダなぁ・・・。
 友達は茂さんの変な気迫に怯えて、店の奥へと逃げ込んでいった。
 それから少しもしないうちに、今度は一人の若い男性店員を連れて現れる。

【店長】お客様・・・わたくし店長の小林と申します。そ、その・・・、当店にお越しいただいているのはお客様だけではありませ――。

【茂】店長は黙っていただこうか!

 ・・・なぜ!?
 また意味もなくカウンターを叩く。

【陽司】あのボケ・・・止めてくる。

 苛立った様子で陽司くんが席を立った。
 怖いけど頼もしい。

【茂】ここはファーストフード店ではないのかね!

【店長】で、ですから私どもは―――

【茂】店長に発言権は無い!

 だからなぜ!?

【陽司】おっさん、いい加減にしろ。・・・そもそも注文はバリューセット4つだったろうが?

【茂】これを見たまえ陽司よ!何と今回のハッピーセットはポ○モンカードゲームだそうだ!ぜひとも欲しい一品じゃないかね!

【陽司】知るか!

【茂】ポケ○ンだぞ!ポ○モン!

【陽司】イイ年したオヤジが恥ずかしい言葉連呼すなっっ!

【茂】物の価値がわからんとは・・・まったく罪なことよ。

 どーいうダンディズムなのか、アゴヒゲを撫でまわしてニヒルに微笑む。
 かくいうその視線の先の陽司君は・・・・・・はっ!

 例えるなら生ける興福寺阿修羅像?
 しかも今ならブチ切れ寸前のオマケ付き、店内全殺しキャンペーン中ですか?

【陽司】人に迷惑かけるのをやめろって言ってんだよ、ごるぁっ!

【茂】やれやれ・・・仕方ない。ではこうしようではないか。

【陽司】あ゛?

【茂】ダブったカードはお前にくれてやる!

 うわっっ、セコっ!
 っていうか論点が完全に違ってるし!

【陽司】いるかそんなもん!

【店長】お、お客様・・・お、お静かに・・・。

【陽司】そもそもハンバーガー40個も食えるか!

【茂】テイクアウトして晩飯にすればいーじゃん!動物性たんぱく質欠乏症のお前らだ、それくらい軽いだろ!?

【陽司】無茶言うな!

【茂】しょーがねぇなぁ・・・。じゃあ負けて20セット!今、10セット頼んで晩御飯に10セットだ!これで文句なかろう!

【陽司】いい加減、二桁超えてる時点で異常なのに気づけよボケっ!

【茂】そのくらい買わないと全部揃わないんだよ!

【店長】あ、あの・・・。

【陽司】また今度こればいいじゃねえかよ!

【茂】やだぁぃっ!

【陽司】こんな時に幼児退行すなっ!

【店長】あ、あのぉ〜〜?

【茂】店長は黙っていていただこうか!

【店長】ひっ・・・・・・な、なんで・・・。

【陽司】店長さんにその態度はなんだごるぁ!迷惑かけてることに気づけ!

【茂】店長に要求されていることは一つ!我々の要求を飲むか!飲むか!飲むかだ!

【陽司】ざけんな、そんなんあるか!

【店長】あのっ!いけます!20セットぐらいなら他のお客様にそれほど影響なく・・・

 げ・・・。
 陽司くんとステディなご飯のはずが・・・・・・いつのまにか大食い大会に・・・。

【茂】おお!さすがは店長殿だ!素晴らしい。

 さっきまで散々たいそうな扱いをしていたというのに、今度はそれはもう馴れ馴れしく店長さんの肩に腕を掛ける。

【店長】は、はは・・・。

【茂】この店は実にイイ店だ。ダブったらまたくるよ。

 一瞬、その言葉に店長さんの顔が凍り付いた。
 大変だなぁ・・・。
 きっとダブらないように裏で全種類そろえてくれるに違いない。

【陽司】ちっ・・・。

 呆れた陽司くんがこっちに戻ってきた、それにつられて茂さんも。
 う・・・店中の視線が痛い・・・。

【月子】バカ二人・・・。

【茂】いやぁ・・・面目ない。ついつい熱くなっちゃったよ。

 少しも反省するようすも見せないで、茂さんは頭を掻きながら椅子に座り込む。
 むぅ、このイヤーな視線の犯人だっていうのに・・・なんて人だ。
 ちょっと腹がたつ。

【陽司】呆れてモノが言えん。

【月子】陽司もうるさかった。

【陽司】・・・・・・悪かったと思ってるさ。

 月子ちゃんにそう言われて少しだけ陽司くんの表情が落ち着いた。
 ・・・なんだろう、ちょっとうらやましい。

【葉鈴】あの、それでハンバーガーは?

【茂】あーー、店長〜〜!

【店長】はっ、はい!?

 さて忙しいと店の奥に引っ込んだ店長さん。
 やっとホッとしたところにまた呼び出されて、何だか息を切らせてレジ前に再び戻ってくる。

【茂】数が数だからさぁ、ここまで運んできてくれない?

 はい?

【陽司】あ゛!?

【店長】・・・・・・ひぃっ、わ、わかりましたっ!

 あ・・・。
 陽司くんの剣幕を勘違いしちゃったみたいだ。
 店長さんはそれはもう怯えて店の奥へと逃げ込んで行った。

【月子】バカ・・・。

 ちょっと同感。
 う〜〜〜、しばらくこの店には近づけないなぁ・・・。


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