青空行進曲 作中抜粋
青空行進曲 作中抜粋
※このテキストは、現在配布停止中の作品、青空行進曲の一部を抜粋したものです。
※ゲーム用に作ったテキストなので、一部読みにくい部分があることをお許しください。
※フリー配布させてみようかともお悩み中デス
※2005,6年ごろに書いた旧作です。まだ未熟な所とかぽつぽつあります。
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画面ブラックアウト→
シーン・廊下・放課後
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【声】あ、兄さん♪
【俺様】………………。
ちっ………捕まったか。
#琴乃登場
【俺様】琴乃、お兄様は今ひじょーに忙しい。また今度な。
【琴乃】知ってるよ。
なんだそりゃ。
どういうわけか、さも得意げに琴乃は俺を笑顔で見上げている。
あーあー。こりゃ早速こいつにも聞きつけられたな、めんどくせぇ。
【俺様】嘘吐け。
【琴乃】イヤイヤもう学校中で噂だよ。あの兵藤一馬が生徒会選挙に殴り込み!!ってね。
【俺様】………………。
あ?
【琴乃】この選挙は波乱!波乱!大波乱に終らぬはずはないっっ!
【琴乃】我ら広報部は引き続きこの動向を追求してゆく!―――って学校新聞に載ってたよ。なーんか久々に活気が出てきていいねー。
【俺様】なんだそりゃ。
【琴乃】えっとね、新聞にはネ、兄さんの過去の悪行―――ぷぷっ☆もとい武勇伝が一大ピックアップされてるよ。
【琴乃】最近の事件からなつかしーー事件まで勢揃いさ!
【琴乃】特に特にぃ〜〜教頭のズラ盗難事件のこととかーーネチネチ追求しちゃったり♪
【琴乃】ラブリーだね。
【俺様】………………。
ちっ……。
【俺様】ったく、相変わらず行儀の悪い連中だな。
【琴乃】え、そう?でもこれけっこー面白いかも♪コレ見て教頭センセー悲鳴上げてたーーーとかも聞いたしー。
そういってカバンから例の新聞を取り出す。
自慢げにその薄い紙束を俺の目の前にちらつかせて………二重にむかつく。
広報部のやつらめ、俺様が生徒会長になったら絶対に粛清してやるからな!
【俺様】お前はどっちの味方なんだ。
【琴乃】もちろん琴乃は兄さんの味方さ。
それはもう、やましさなんぞ欠片もかいま見せず、琴乃は無邪気に笑う。しれっと。
あーもう―――付き合ってられん。
悪意が無いのはわかるんだが、もうちょっと………なぁ。
まあ、色んな意味で俺の妹だな。こりゃやっぱ確実に血ぃ繋がってるわ。
【俺様】そうかよ。
【琴乃】うん♪
【琴乃】………………。
【琴乃】でで、兄さん兄さん♪
【俺様】あーーうっとーしい!まとわり付くな!
おまけにスキあらばくっついて来るわけで、扱いづらいったらない。
………………。
ちなみに夏でもコイツはコレだ。非常に罪深い。
【琴乃】くふふーー隠したって無駄さー。
【琴乃】どうせ兄さんのことだからサ、これから悪さしに行くんでショ。琴乃も連れてってよ♪
【俺様】却下、着いてくるな。邪魔。
【琴乃】ダイジョブダイジョブ、琴乃も手伝うからサ。
【俺様】………………。
【俺様】それが一番不安なんだぜ……。
けどま―――
【俺様】まあ、いっか。勝手にしろよ。
これでも何かの役には立つかもしれねーしな。
野球部の奴ら何かと女っ気が無さそうだし、悪くないか。
【琴乃】へへーーやった♪どこまでもお供しますぜ、兄さん。
【俺様】邪魔すんなよ。
【琴乃】うんー。張り切っちゃう♪
………………。
………不安だ。
【琴乃】で、どこ行くの?
【俺様】―――ドカベンとこ。
【琴乃】ドカベン?
【俺様】行けばわかる。
#琴乃立ち絵消去
【琴乃】あっちょっ……ま、待ってよぉ〜!
【俺様】待たねぇよ。
ったく、最近は何かと騒がしくていけねぇ。
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シーン・グラウンド・放課後
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―――グラウンド、野球部の練習場
【先輩部員A】お前たちは何だあああぁぁぁっっ!
【後輩部員B】はいっ!甲子園っス!
【先輩部員A】そおおおぉぉぉだぁぁっっ!俺たちは甲子園だぁぁ!
【先輩部員A】甲子園は甲子園に行かねばらなぬ!何故なら俺たちが甲子園だからだぁぁっっ!
【後輩部員B】はいっ!甲子園は甲子園に行くっス!
【先輩部員A】よおおおおおおおっっし!じゃあ今日も千本ノックいくぞぉぉぉぉ!!
【先輩部員A】いいかぁぁ、このボールわぁぁぁぁ、すべっって甲子園だぁっっ!わかるかっっ!
【後輩部員B】はいっ!
【先輩部員A】甲子園をトンネルしたらどうだっっ!
【後輩部員B】最悪っス!悪夢っス!割腹するっス!
【先輩部員A】そおぉぉだああああっっ!
【先輩部員A】………こんちくしょおおおおぉぉぉっっ!
【先輩部員A】俺たちは負けちゃいない!負けちゃいないんだぁぁ!
【先輩部員A】ほんっっの少しだけヤツらが甲子園だっただけだぁぁっっ、次は負けんっ、次は負けんぞぉぉっっ!!
【後輩部員B】先輩、トラウマのスイッチ入ってるっす!
【先輩部員A】うるせーーー!俺はあの時捕れたんだ!トンネルなんかしてねーー!俺が甲子園をトンネルするはずが無いんだあああぁぁっっ!!
【先輩部員A】もーーーヤダヤダヤダァ〜〜!野球なんかやめるーーー!
【先輩部員A】―――けどやっぱやめないからぁーー!こーーーしえんっ!こーーーーしえんっ!こおおおおしえーーーーんっっ!
………………。
………。
【琴乃】わああ、青春してるネー。
【俺様】脳みそ腐ってんじゃねえか、お前?
【琴乃】へーんだ兄さんの悪口なんか慣れっ子なんだから。
【俺様】そうかよ。
【琴乃】そうだよ、へんだっ。
………………。
怒ってるじゃん………。
ま、いい。
【俺様】ヨウ、ドカベン居るか?
取り合えずあのヘンなテンションのヤツらはスルーして、他の目に付いた野球部員に聞いてみる。
【部員C】青春っス!最高っス!エクスタシーっス!オウアッッ!ハァッハァッハァッハァァァ……ウッ!
【俺様】………………。
コイツは、ダメっと。
ダメっていか、関わりたくねぇ。
【部員D】妹がね………最近僕と一緒に寝てくれないんだよ……。
【部員D】お風呂だって別々に入りたがるし………なあアンタ!うちの妹だいじょうぶだよな!?変になったりしてないよな!?
【俺様】親御さんに相談シロ。きっと解決する。
【琴乃】あ、兄さん兄さん、たまには一緒に寝ようよ。
【俺様】ウチの寮長のオバちゃんに相談してみな。きっと解決する。
【琴乃】うん、わかったー。
………………。
………。
馬鹿どもが………!
【部員E】特訓だ!特訓なくして成長あらず!取り合えずFよ!このプルトニウムのバットを使うのだっっ!
【俺様】どっから手に入れてきたんだよ………。
【部員E】拾ってきた!
【琴乃】わーーースゴイ。
【俺様】嘘付け。
【部員E】………………。
【部員E】むっ―――いかん!これは………持てんではないかっっ!
【俺様】そりゃ金と同じ重さだからな。腰痛めるぞ。
【部員E】………………。
【部員E】………仕方ない、これはタイヤ引きの代わりに使うか。
【俺様】お前………愚かにもほどがあるぞ。
………………。
【部員G】えっ、主将っスか?ここに居ないなら部室じゃないっスかね。
おお。
【俺様】握手していいか?
【琴乃】あ、じゃあ琴乃もー♪
【部員G】あっ、恐縮っス。あ、どもっス。
【部員G】せっかくっスからご案内するっス。こっちっス、こっちが部室っス。
【琴乃】いやぁ、いい人だねぇ。
【俺様】他の連中がアク強過ぎるんだヨ。
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シーン・部室・放課後
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【琴乃】うひゃーーーヲトコくさーい。
で、野球部の部室に入ったなり一言目がそれらしい。
けどまあ、確かに汗臭い。男臭い。グラウンドの砂利が入り込んでやたら埃っぽいし、おまけに日当たりも悪い。
こりゃ長居する場所じゃないな。
【俺様】部室なんてどこもこんなもんだろ。
【琴乃】そりゃ偏見ですよ、兄さん。
【部員G】弁慶主将、お客さんっス。
【野太い声】んーーー?
#弁慶登場
【俺様】ヨウ、久しぶりだな。
【琴乃】で………でかっっ!兄さんっ、この人でかいよっっ!
【弁慶】おお、一馬くん。やっと部に入る決心をしてくれたんだね。キミがいれば野球部は敵無し―――
【俺様】阿呆、そんな気さらさらねーよ。
【弁慶】………………。
【弁慶】一馬くん、野球はいいぞ、野球は。
【俺様】そうだな。
【弁慶】………………。
【弁慶】甲子園もいいものだ。
【俺様】そうかもな。
【弁慶】………………。
【弁慶】どうだい、野球部に………
【俺様】また今度な。
【弁慶】………………。
【弁慶】そうか………。
【弁慶】―――ところでその女の子は一馬の妹かい?
【琴乃】うん、義理の!妹の兵藤琴乃デス!
馬鹿言え。
【俺様】実縁だ、実縁。コイツは実縁の妹だ。
【弁慶】………………。
【弁慶】つまり、グラブとミットみたいなものかい?
【俺様】いや、そう言われてもな………意味がわからんぞ。
【弁慶】………………。
【弁慶】そうか………。
【俺様】ちっ………そんなことはどうでもいい。
ったく琴乃のヤツめ、早速脱線させがやって。
【俺様】弁慶。俺が今日ここに来た意味ぐらい、お前にもわかるだろ。
【弁慶】………………。
弁慶のヌボーっとした顔が、さらに緊張感なく首をかしげる。
ホントにコイツ主将なのか………?ひじょーにだらしない。致命的に緊張感が欠落しとる。
【弁慶】助っ人料の引き上げか?もうこれ以上払えんぞ。
【俺様】違うっっ!
【琴乃】うわぁ………兄さんなんかあくどーい。
【弁慶】一馬くんとプレイできるなら安いものだ。
【琴乃】オーー。
【弁慶】なら………。
【弁慶】やっぱりうちの部に入ってくれるのか?
【俺様】だからそれは無い。
【弁慶】そうか………。
【琴乃】兄さーん、それはちょっと〜〜弁慶さんがかわいそーだよー。
【俺様】うるせぇ、いつものことだ。気にすんな。
【弁慶】うーーん。
【弁慶】じゃあそこの、キミの妹をうちのマネージャーに推薦しに来たとか………。
【琴乃】お断りさせていただきますっっ!
金切り声だ。
狭い部室に反響して、耳が少しキンキン鳴っている。
そんなに嫌だったのか。
【弁慶】………うーーん、残念。じゃあ………
【弁慶】………………。
【弁慶】………………。
【弁慶】ああ、さっぱり見当がつかないよ。いったい何なんだ?
【俺様】はぁ………お前の頭にゃ野球以外にないのか……。
【弁慶】………面目ない。
【俺様】弁慶、俺は生徒会長に立候補した。よって俺を支持しろ!
【琴乃】うわあぁ、さすが兄さん、ストレート過ぎ。
【弁慶】ストレートか、アレはイイものだ。何よりロマンがある。
【琴乃】あ、意外に好印象。
【俺様】いいから黙って俺を支持しろ、いいな?
【弁慶】うーーーーん………。
【弁慶】………………。
【弁慶】無理だなぁ、ごめん。
【俺様】なんだと………。
【弁慶】一応これで部の方針だから………困るよ。
【俺様】………………。
【俺様】………………。
【俺様】そうか。
おのれ………。
予想外に強情だ。
【俺様】………だが、俺も引き下がれん。
こうなったら………。
【俺様】勝負だ、弁慶!
【弁慶】な、何だい、何の話だい?
【琴乃】イヤーーな予感がするね……。
【俺様】だから勝負だ!弁慶、俺が勝ったら俺を支持しろ!いいな!
【弁慶】ちょ、ちょっと………いきなり困るよ。
【琴乃】はぁ………何かと思ったら、あぁ……呆れてものも言えないよ。
【俺様】くっくっくっ、ほぅ………逃げるのか。
【弁慶】そういうわけじゃないけど………勝負なんて……。
【弁慶】だから僕の一存じゃ………決めれるんだけど、決めちゃいけないというか………。
【弁慶】困るよぉ………。
【俺様】いいから俺と勝負しろっっ!野球で!簡単でいいだろっ!
【弁慶】―――野球!?いいよーーわかったーー!
【琴乃】へっ………?
【琴乃】………ちょっ!べ、弁慶さん!
【俺様】………………。
【俺様】………………。
【俺様】よーーっし、まあ何でもイイ!
【琴乃】よくないよぉっ、今の流れ絶対ヘンっっ!
【俺様】かまわん!よーっし勝負だ、行くぞ弁慶!
【弁慶】わかった!
【琴乃】おーい………おおーーい?お二人さん?
【琴乃】おーーーーーーーーーーーい………。
【琴乃】もーーーぉっ!なんだヨーーその野原に遊びにいく少年みたいな態度はサーー!
【琴乃】どーでもいーから、こらーー!琴乃をおいてくなぁー!
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画面ブラックアウト
シーン・グラウンド・放課後
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【俺様】いいか弁慶、今から3球投げる。ボールっ球は投げねぇ。
【俺様】3球とも俺からヒットを取れなかったら、大人しく選挙で俺を支持してもらうぜ。
【弁慶】………………。
【弁慶】………わかった。
【俺様】………………そして、あることじゃねぇがもし俺から、お前が一回でもヒットを取れたとしたら。
【俺様】いいさ、そのときは俺もいい加減アンタの部に入ってやるよ。
【弁慶】おお、本当か!?
【俺様】二言はねぇ。
【弁慶】おお、おおっっ。いいだろう、この勝負乗ったぞ!
【俺様】へっ、後でゴネるなよ。
【弁慶】一馬こそ覚悟してもらおう。
【俺様】おうよ。
………………。
【俺様】………じゃ、覚悟はいいかい?
【弁慶】いつでも来い。お前こそ肩慣らしはいいのか。
【俺様】そんなもんいらねぇよ。………じゃ、いくぜ。
【弁慶】おう!
マウンドに登った。
少しだけ高くなった世界をぐるりと見回して、バッターボックスを睨んだ。
へっ、何度見ても無駄にでけぇ男だな、弁慶。
バッターボックスに窮屈そうに収まっているその様は、多少可愛げがあるものの威圧感もなかなかだ。
守れば強肩、好リード。
打てば豪腕スラッガー、打率は七割五分の超高校生級。
トンっっでもなく足が遅いのが弱点だが、その点以外は最高のプレイヤーだ。
気を抜いたら間違いなく打たれるぜ。
【部員】弁慶さん負けるなーー!
【弁慶】はは………がんばるよ。
【琴乃】兄さんがんばってーー!
【俺様】やなこった。
【琴乃】な、なんだヨー、その反応はサー!
【俺様】弁慶、始めるぜ。
【琴乃】あっ、コラー!無視すんナーー!こんなにかわいー妹が応援してるんだゾーー!
【弁慶】ああっこいっ!
【俺様】へっ、俺様の実力、骨まで味わい尽くしやがれ!
【俺様】おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ………!
【俺様】どおおおおおお〜〜りゃっっ!
【弁慶】………!
ブンッッ!!スパァァァ〜〜〜ンッッ!!
【弁慶】………………。
【俺様】へっへっへっ、何か今日は今までになく調子がいいぜ。これで後2球だな。
【弁慶】ははは………そうみたいだね。
【弁慶】………………。
【弁慶】何か、あったのかい?
【俺様】あん?
【弁慶】本当に今日のキミは生き生きしている。
【弁慶】今まで何度も助っ人をお願いしたものだけど、一馬がこんなにも楽しそうに野球をするのは始めてだよ。
【俺様】そうか?俺はいつも楽しんでるゼ、でなきゃやる価値がネーしな。
【弁慶】………これは期待できそうだ。
【弁慶】………さあ、こい。
【俺様】へっ、次はもっとスゲェのいくぜぇぇ。
【弁慶】はは………お手柔らかに頼むよ。
【俺様】けっ、やなこった。
【俺様】おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ………!
【俺様】どぅぅぅおおおおおおりゃっっ!
ブンッッ!!スパァァァァ〜〜〜ンッッ!!
【俺様】よおおおおおっし!フーーハハハァァ!
【琴乃】兄さん何かお行儀悪〜〜い。
【弁慶】………………。
【弁慶】参ったなぁ………いつもの何倍も伸びる。これ、やばいかな。
【俺様】グファファファ!これが本当の俺様の実力よ、もっと驚きやがれ!
【弁慶】………けど。
【弁慶】甲子園………。
【琴乃】へっ?
【弁慶】甲子園よ!僕に力を貸してくれっっ!
【弁慶】おおおおおお!
【弁慶】………………。
【弁慶】………一馬ぁ!さあ、来い!
【俺様】………………。
【俺様】お、おうよっっ!いくぜっっ!
【俺様】どおおおおおおりゃっっ!
キンッッ!!
何煮ぃぃっっ!
身よ壊れろっってくらいに身体を捻って打球を視線で追いかける。
………………。
フェンス激突―――ファール。
【俺様】………ふぅ、あ、あぶねぇ。
【琴乃】だいじょうぶ〜〜〜兄さん?
【俺様】うるせぇ!大丈夫に決まってるだろっ!
―――もう少し左に切れなければ危うくホームランを取られるとこだった。
【弁慶】ファールは投げ直しだろ、一馬。
【俺様】お、おう。
やべぇ。
何か弁慶の野郎急に気合入れやがった。こりゃ大丈夫じゃ、ねぇな。
………………。
次は打たれる………か?!
【俺様】………………。
………………。
………。
………………。
………。
仕方ない、アレを使うか。
【俺様】ちょっとタイムだ。
【弁慶】タイム?………わかった。
【俺様】といっても1分も待たせねぇから安心しな。
ポケットから例のブツを取り出す。
【俺様】弁慶、ちょっとこっち来い。
【弁慶】なんだ?
【俺様】いいから来いよ。
【弁慶】あ、ああ………。
【琴乃】なーーんかまたイヤーな予感が………。
【俺様】クックックックッ………。
【琴乃】よ、予感っていうか、確信………かな、あはは………。
呼ばれたとおり弁慶は俺の傍らに来る。ふはは、馬鹿めっ!
【俺様】弁慶、これを見るが良い。こんなこともあろうかと用意しておいたのだ。
【弁慶】………んーー?
【弁慶】―――ほうあっっ!?
【琴乃】え、何々!?
【俺様】クックックッ………ハァァーハッハッハッッ!!
コレはとある真っっ黒なスジから入手した情報でな。
どうやらこの男にも惚れた惚れられたってのが一応あるらしい。
3年C組松原八重子。ポニーテールのキュートな小柄な女子だ。
それでどうやら、この女が弁慶の憧れの相手というわけらしくてな、ふっ、ふははははは!
【俺様】どうだ!しかもコレをなぁ………ほぉーーれ!ボールに貼り付けてだなぁぁ………。
その写真をこのとーーり、ボールにのり付けしてやってるのよっっ!ひひゃひゃひゃ!
【弁慶】やっ、やめろぉっっ!な、何をするんだっ!やっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!
【琴乃】だからいったい何なんだよぉー!
【俺様】クケケ………よおーし完成だぁ。戻って、いいぞぉー弁慶ぇぇ……。
【弁慶】ま、まさかお前!?ま、まさか………一馬ぁぁぁぁ!お前ってヤツわぁぁぁぁ!
【俺様】聞く耳もたねぇぜ。俺はコイツを投げるっていったら投げる。ぜってー曲げねぇ。
【俺様】お前も打ちたきゃ打てばいいんじゃねーーのか、ふひゃひゃ!
【琴乃】兄さん………また悪いことしてるんだね……。
【俺様】なーーーんのことだかなぁ………くっくっくっ、なぁ……弁慶ぇぇ。
【弁慶】くっ………ぬぐぐぐ……くぉぉぉぉぉっっ………。
【俺様】そうだよなぁ………あの弁慶さんがまさかこーーーんなちっちゃい女の子に惚れてる、なーんて知られた日にゃぁなぁぁ………。
【弁慶】うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!これ以上そのことを言わんでくれぇぇぇぇぇっっ!!
【俺様】さあ………勝負といこうぜぇ……ヒヒッ。
【弁慶】か、一馬ぁ………お前ってやつは……お前ってやつわぁぁ………。
【俺様】さ、戻りナ。このままじゃ余計いぶかしまれるぜぇぇ。
【弁慶】!?
【弁慶】………わ、わかった。
普段ほがらかな弁慶の表情に何十にもシワがよって、フッフハハッ、非常に愉快だ。
ヤツは不安定な足取りで、すごすごとバッターボックスに帰ってゆく。
【俺様】よおおおおっし、いくぞ弁慶!
【弁慶】ま、待て!
【俺様】聞く耳もたん!投げるといったら俺は投げる!いくぞ!
【弁慶】くっ………。
これで終わりにしてやる。
渾身のヒネリを込めてストライクコースど真ん中にブチ投げる。
【俺様】どおおおおおおおおりゃああああぁぁぁっっ!!
【弁慶】だ、ダメだぁぁぁぁっっ!
ブンッッ!スパーーーーーンッッ!!
【琴乃】………あ。
【俺様】くっくっくっ………俺様の勝ち、だなぁ。
【部員】弁慶さんっっ!
【弁慶】ま、負けた………自分に……負けた………。
【俺様】まだまだだなぁ、弁慶。
【弁慶】………………。
【琴乃】むむ、なーんか釈然としないなー。
【俺様】俺様の勝ちだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。
【琴乃】そ、そうだけど………。
【弁慶】一馬、僕の負けだ………。
【俺様】へっ……相変わらず甘ぇヤツだなお前は。けどまあ、約束は約束だ。守ってもらうぜ。
【弁慶】………………。
【弁慶】ああ、野球部はキミを支持する。主将である僕を倒したんだ、皆も異論はないだろう。
【部員】甲子園ぇぇぇんっっ!俺たちは甲子園だっっ!キミも僕も甲子園だっっ!全ては甲子園だぁぁ!
【琴乃】異論が無いっていうか………みんなホント甲子園と野球以外興味無いんだね………。
勝負が終った途端、連中はもう練習に戻っていた。
【弁慶】どうだい、よかったらウチのマネージャーに………。
【琴乃】お断りしますっっ!
【弁慶】そうかい………。
【俺様】………………。
【俺様】まあ、気が向いたらお前の夢も手伝ってやるよ。今はこの遊びに忙しいけどな。
【弁慶】………それは、本当か?
【俺様】ああ。野球ってやっぱ楽しいしな。練習はさらさらする気にもなれんが。
【弁慶】おお………約束だぞ。
【俺様】いいぜ。
【俺様】それじゃ、俺たちはこの辺で失礼………
【甲高い声】待て、兵藤一馬!
あ?
#続きは本編で!(その本編を配布停止しているのですがw)
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