青空行進曲 OP抜粋



青空行進曲 OP抜粋



※このテキストは、現在配布停止中の作品、青空行進曲の一部を抜粋したものです。
※ゲーム用に作ったテキストなので、一部読みにくい部分があることをお許しください。
※フリー配布させてみようかともお悩み中デス

※2005,6年ごろに書いた旧作です。まだ未熟な所とかぽつぽつあります。


第一話 プロローグ


前略、クソ親父。

俺様がキサマから解放されてはや一年と半年が過ぎ去りやがりました。
訊きたくもないが一応訊いてやる。いかがお過ごしやがりだろうか。

キサマがいないおかげで俺様は超元気です。
毎朝ベッドから這い上がるたびに、この幸せを思い起こして超悦に入ります。

あれは5歳の頃だったでしょうか。

近所の桜の木に登った俺は足を滑らせて二の腕を骨折しました。
というのもタバコ吹かして散歩中だったキサマが、よりにもよって木登り中のこの俺様を偶然発見し、あろうことか木の幹に蹴りを入れて俺様で遊んだのが原因でした。
そのくせ母さんには飄々とした顔で、俺が桜の木の上で蝶を追いかけようとして落っこちた。
と嘘の供述をしやがりましたね。

幼い子供ごころながらあのとき俺は、キサマを本気でぶっ殺そうかと思いました。

………………。

またあれは俺が小学6年生の頃だったでしょうか。

俺様は夏休みの自由研究にミニトマトの栽培をしていました。
泥まみれになりながらせっせとプランターに土と肥料を仕込んだことは、今も忘れえぬ大切な思い出です。
種を蒔いてせっせと水をやって、やがて芽生えた小さな双葉に幼い心を感動に躍らせて、そして見違えるように大きく育ちその実をつけ始めた我が子の姿に俺は………。

なのに!
なのに俺様がプールから帰ってきたある日その時!

無くなってたんですよ、トマトが!
全部!ぜええーーーーーんぶだ!

母さんが今晩一緒に食べましょうね♪
って言ってくれたあの赤く熟した果実も!

これはもうちょっと待とうか♪
って言ってくれたあの熟しかけた黄色い果実も!

よりにもよってまだ硬くて真っ青な、鳥だってまだ食べやしないあの青い果実も!

全部!ぜええーーーーーーーーんぶてめぇが!
庭に生ってたとかボケたことぬかして食いやがったんだっっ!!

傷ついたんだぞ俺は!
すげぇ傷ついたんだぞ俺は!

あの日の晩、俺は包丁盗み出してお前の部屋いったよな!
そしたらてめぇ俺に謝りもせず母さんにチクりやがった!

母さんは俺を怒った!
どうしてこんなことしたの?

てめぇはどうしてあんなことしやがったんだあああああああああ!!

………………。
………。

………………。



/////////////
#シーン 教室、授業中
/////////////



よし。多少エキサイティングしてしまったが―――まあ完成だ。
俺様は机を立ち教壇の男にそれを突き付ける。

【俺様】完成である。受け取るがよい。

【三島】………………。

そいつは陰湿そうな目で俺様を睨んでその原稿用紙を受け取った。
景気の悪い態度だぜ。

【三島】………再提出。

そして少しも目を通し切らないまま教壇に放り投げやがる。

【俺様】フハハハハハ、断るっっ!

【三島】なら立ってろ。

【俺様】ふっ、哀れな……。

【三島】なんだと?

【俺様】現代国語教師、三島逝夫。キサマの目はベンジョ虫以下の節穴らしいな!

【俺様】見よ!これのどこが再提出だというのだ!

【俺様】素晴らしいじゃないか!?素晴らしいじゃないかね!?

【俺様】自分でもここまでストレィトォ!にヤツへの憎しみが発露するとはおもわなんだ。

【俺様】これは絶対確実にヤツへと送りつけるべし!

【俺様】そしてあわよくば母さんの目に入れてあの糞野郎の悪行を暴くべきだ!

【俺様】いいか!積年の恨みを晴らすときがついに来たのだっっ!

【俺様】わかるだろ!今しかないんだ!恨みを晴らすのだよっっ!


【三島】………………。
【三島】………………。
【三島】………………はぁ。


ちっ、嫌なやつめ。
三島はウンザリと疲れ果てた様子で背もたれに身を預ける。


【三島】………………。
【三島】………………。
【三島】もういい、立ってろ。


【俺様】………………。
【俺様】………なんだと?


【俺様】くっ……やれやれ、俺の聞き間違いだな。
【俺様】まさか三島先生ともあろう者が、そんな古典的な仕打ちをする、わけがない。


【三島】いいから立ってろ、お前がいると疲れてたまらん。

なんだと!?

【三島】………そうだな、廊下あたりなどどうだ?視界から消えてもらえると嬉しいのだがな。

………………。
ふっ………殺す。

殺す!殺す!殺す!ぶち殺す!!
ドツキ回してこねくり回してそんで肉団子にしてやる!
その汚ねぇケツのアナにチョークぶち込んで屋上から突き落としたる!

殺す!ぶっ殺す!

【三島】な、何だその拳は!ま、ま、まさかやる気じゃないだろうな!?

【三島】わ、わかってるのか!?た、たたた、ただじゃすまないぞぉぉ!いいのかぁぁ!?

【三島】せ、先生はなぁ!こ、これでもクレー射撃三段だぞ!

【俺様】………………。
【俺様】………………。

ダメじゃん………。

【俺様】ちっ………悪かったよ。大人しく廊下に立つ、じゃあな。

【三島】ひ、ひう、ひう……わ、わかればいいんだ、わ、わかれば……。



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#シーン廊下
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廊下に立つ―――か。
マンガとかではよくあるんだが………実際どうすりゃいいんだ?

………………。
………………。

こんなもんか?
向きとか体勢はこれでいいんだよな。
姿勢はきっちりキオツケ!―――だっけ?

………………。

これでいいんだよな、多分。

………………。
………………。

って、え?
ホントにこんなんでいいの?

………………。

おいおい。ちょっと待てよこりゃ。

………………。

楽過ぎる……。
これちょっと………楽過ぎやしないか?

ダメだろーーコレ。シツケの意味ないじゃん。
こんなんじゃ俺、毎日立っちゃうぜ。

………………。

あ、今のちょっと下ネタっぽいな。

………………。

あーーー良い天気だな。
屋上で昼寝したらすっげー気持ち良さそ。
………あふ。

………………。

いかん。いかんいかんいかん!
違う!これは何か違うぞ!
これでは『立たされ』の醍醐味が半減じゃないか!

そうだ、何かが足りんと思ったらバケツだ!水の入ったバケツ!
アレを両手と頭にのせてこそ真の『立たされ』だ!
よおおおおおおっし!



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#シーン教室
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【三島】うわあおっ!?せ、先生をな、殴るのか!?そ、そうなんだなぁぁっ!?

【俺様】違う。

がさごそ。

【三島】う、ううう、ウソをつけぇ!お、おおまえの魂胆はわ、わかっているの、だ!

【三島】わ、私を油断させて、酷いことするつもりなんだろぅ!

【俺様】違う。

がさごそ。

【三島】な、なら何だというのだ!


【俺様】俺はただ『真の立たされ』を実践するべくバケツを探しているだけだ。
【俺様】ないぞ、おい。バケツがない。どこに隠した。
【俺様】あれが無いと『真の立たされ』が実現できないではないか。


【三島】バケツならトイレにあったかと思うが………。

【俺様】なんだと!?なぜそれを早く言わん!

【三島】ぐふっ、げふっげふっ、く、苦しい……む、胸倉をつかむな、げほっげほっ。

【俺様】おっと悪い。

【三島】ぐほっぐほっぐほっ……げほっ………。

【俺様】ありがとヨ、センセ。助かったぜ。


【三島】………………。
【三島】………………。


あれ?
喉元を押さえる三島センセ。

その落ち窪んだ目がチロチロと暗い炎を湛えている―――ように見えなくもない。

【三島】ひょ……

【俺様】ん、どうしたのセンセー?

【三島】ひょ、兵藤一馬あああああぁぁぁぁぁ!!

【三島】出てけぇ!出てってくれぇ!

【三島】私の安住の学び舎からっっ!今すぐ出てけ!出てってくれぇぇぇ!もう嫌だぁぁぁ!!

【俺様】わっと、うわっ、ちょっと、センセ、危ないって、うへっ、うわわわわっっ!



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#シーン廊下
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三島センセに教室から追い出された。

………………。
………というか、押し出された。

何せ発狂しかけのいい歳したおっさんが、金切り声上げて突っ込んできたんだからな………。
そりゃ逃げるってか、怖ええよ……。

まあ、ともあれ。バケツの場所がわかったわけだ。
ちょいと盗ってくるべ。



/////////////
#男子トイレ(画面ブラックアウトで表現)
/////////////



おっ、あったあった。
おあつらえ向きに三つもあるじゃねえか。

後はこいつに水を汲んで………。

………よし。

/////////////
#シーン廊下
/////////////

結構重いな……。

………………。

が、ふっ。完璧だ。
このとおり両手にバケツは当然として。
確かマンガで見た限り。頭の上にもバケツを載せていた!

どうだ!このとおり完全に再現したぞ!
これぞ真の『立たされ』!

やったぜ!俺はやったぜ父ちゃん!
………って、何でこんなとこでヤツが出てくるんだ!
ケッ、死ね死ね!親父なんて死ね!

もう直ぐお前の悪行を暴いてやるからな、くっふっふっ……。

【男の声】いやぁ………面白いことしてるね、兵藤一馬くん。

ん?

ふと気づくと目の前に変な男子学生がいる。
………あれ?どこかで見たことがあるような。

というか、今授業中じゃね?

【男子学生】ふふっ、質問の沢山ありそうな顔をしているね。

【俺様】そうでもない。

【男子学生】あれっ、そうなのかい?


【俺様】ああ。アンタがなぜ授業中なのにほっつき歩いているのかとか。
【俺様】どこかでアンタを見たことがあるような気がする、こととか。
【俺様】そしてどうして俺の名前をフルネームで知っているのか。
【俺様】全てひっくるめて知りたくもない。


【男子学生】あははっ、そっか。うんうん、そりゃそうだよね。

【男子学生】僕はキバヤシ、一応三年生だからキバヤシ先輩かな。よろしくね。

【俺様】………………。

何かが、引っ掛かる。
何かが引っ掛かる。

………だが思い出せない。もどかしい。

【キバヤシ】あれ、どうしたの?

【俺様】いや………何でもない。

【キバヤシ】そう。

【キバヤシ】そうだ。僕の方からも質問していいかい?

【俺様】何だ。

【キバヤシ】何でそんな………ふふっ、面白い格好してるのかな?

【俺様】………………。

【キバヤシ】ん……?ああ、ごめん、気を悪くしたかい?

【俺様】いや、お前が妙に馴れ馴れしいから辟易していただけだ。

【キバヤシ】そっか。ならいいね。

【キバヤシ】で、何をしているんだい?


【俺様】………………。
【俺様】お前は、立たされたことがあるか?


【キバヤシ】うーーん、随分昔に………一回だけ、ぐらいかな。

【俺様】で、どうだった。

【キバヤシ】そうだね、退屈だった。けど新鮮な感じもしたかな。

【俺様】そうだ。退屈だが、立たされることは意外と楽しいものらしい。

【キバヤシ】罰が楽しみへと変わる。皮肉だね。

【俺様】だが、俺は立たされるなら徹底的に『立たされ』を実践したい。

【キバヤシ】はは、何でまたそんな………面白い考え方するかな。

【俺様】ただ立たされるだけでは物足りんからだ。

【俺様】だからこうやって、真の立たされを実践している。

【キバヤシ】ふーん………すごいなぁ。


妙なやつだ。
不思議なぐらい悪意や毒気を感じない。
しかしそれがまた逆に、本音のわからない不審を抱かせる要因にもなっているようだが。


【キバヤシ】ねえ、ちょっと歩かないかい?

【俺様】歩く?

【キバヤシ】そう。今日は良い天気だし、屋上にピクニックに行かない?

【俺様】ピクニック?

【キバヤシ】そうそう、ピクニック。お弁当はないけどね。

【俺様】………………。


変なやつ。
人のことは言えないが。


【俺様】生憎だがこれでも授業中だ。それに『立たされ』を徹底したい。

【キバヤシ】だいじょうぶだいじょうぶ、僕の方から言っておくからさ。

【俺様】言うって………誰にだ。

【キバヤシ】キミの担当の先生にさ。


【俺様】担当って………三島か?
【俺様】やめておけ、先ほど極限まで怒らせたばかりだ。やぶ蛇だぜ。


【キバヤシ】あっ、何だ彼か。じゃあ話は早いね。ちょっと失礼するよ。

【俺様】ああ。

【俺様】………って、おいこらちょっと待て!お前何やるつもり……!


まるでヤツの周りだけ空気の振動が止まってしまっているかのように、キバヤシは俺の制止に微塵も反応しない。
そのまま軽やかに教室の扉を押し開いて………


【キバヤシ】失礼します。


っと、悠々と入っていった。

当然突然の来訪者にざわつく室内。
三島先生の金切り声―――は残念、聞こえない。


【俺様】………………。

キバヤシは三島先生と話をつけると言っていたが―――その二人の声が聞こえないな。
何だ?どうなってるんだ?

………………。
………………。

【キバヤシの声】ありがとう、助かったよ。

【三島の声】これは助言………に留めておくのですが、あまりアイツと付き合うのはお勧めしませんぞ。

【キバヤシの声】そうなのかい。わかったよ、ありがとう。

【三島の声】え、ええ!そうですとも!

【三島の声】アイツは敵です!この学園の敵なのです!

【キバヤシの声】それではお邪魔しました。

【三島の声】ま、またお越しください!

………………。
………………。

な、なんだぁ?

【キバヤシ】やあ。

【俺様】………………よう。

【キバヤシ】了承はとってきたよ。じゃあ行こうか。

【俺様】………マジか?

【キバヤシ】うん。超・マジだよ。

【俺様】………むう。アンタ何者さ?

【キバヤシ】それはピクニックしながら、にしようよ。

【俺様】付き合えば教えてくれるのか?

【キバヤシ】うん。約束するよ。

【俺様】そっか………なら付いてく。

【キバヤシ】うん、行こう。


#抜粋終わり


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