※このテキストは実際のゲームシナリオから抜粋したものです
※ところどころ読みにくかったり、前後関係がわからなかったりかもですので、雰囲気だけをお楽しみください。
ねえ、いつまでそうやってるつもり?
【俺】………………。
【俺】………………。
眠い。
………………。
………。
………………。
………。
ん………。
ん、んぅぅ……。
………………。
うんん……。
………………。
………。
何故だろう。
あんなにやさしく俺を包み込んでくれた眠気が、突然消え去ってしまった。
【俺】………………。
不満だ。
せっかくの眠りが、ちっともまどろみを味わえなかったというのに………何で目覚めてしまったんだろう。
【俺】………………。
【俺】………………。
此処は何処?
【俺】………………。
あれ……?
この思考って、何度目だろう?
………………。
その思考はまるで映し鏡みたいに感じた。
まるで記憶は蘇らなかったけれど、自分が果てし無く何度も何度も、同じことを繰り返していたことは理解できる。
………………。
………。
痴呆症にでもなっちまったのかな……。
………………。
そもそも痴呆と健全の差が、個人にとってどれほどかもわからないけど。
【俺】………………。
【俺】………………。
把握した。
此処は保健室。時刻は夕暮れ、窓の向こうから空恐ろしいほどの真っ赤な夕陽が射し込んでいる。
正確な時間は………わからない。
もとい、時計がない。
此処が俺の知る保健室ならば、確かにあの柱の上に飾り気のない大時計が掛かっていたはずなんだが………。
………………。
………。
まあいい。
どうせ止まるなどして、修理に持ってかれているんだろう。
………………。
気にするようなことじゃ………ない、はず……。
………………。
………。
カーテンをたなびかせて、淫猥な老婆のように素肌に粘りつく風。
その波の周期はどこまでもわざとらしくて、この上なく人を不快にさせる。
まるで空気そのものが意思をもっているかのようだ。
………………。
………。
聴覚を支配するのはヒグラシの声。
何処までも何処までも澄んだ、怖ろしいほど響き渡るヒグラシの声。
精神のもっとも深いところまで、その声は俺を支配して放さない。
………………。
………。
そう、何より不気味に感じてしまうのは、常にそこなのだ。
だってそうだろう。
世界には沢山の音が満ち満ちている。
無音に感じられるその時だって、耳を澄ませば気づかないところで何かが鳴ってるんだ。
音のない世界なんて地上にそうそうありえない。
この地球上にいる限り、音は常に俺たちと一緒にいるんだ。
………………。
………。
………………。
………。
それなのに………。
ただ一つの気配すら世界には無い。
在るのは発生源の不明瞭なこの、怖ろしいヒグラシのみで、この世界にはそれ以外の音が何一つ無かった。
………………。
………。
俺はまだ夢を見ているのか?
いや、夢ならまだいい。
この世界が現実だったとしたら………俺は………。
………………。
不安になって両手を叩いてみた。
パチンと馴染み深い物音がなって、ホッと安心する。
その音はヒグラシほどリアルではなかったけれど、それでも現実染みて感じた。
#画面ブラックアウト
探しに行こう。
拍手は心身に勇気をくれた。
初めて巣の外に出る動物の子供のように、ベッドから這い出して床に脚をつける。
………………。
………。
一人は嫌だ。
こんな気味の悪い世界に、一人でいるのは嫌だ。
探しに行こう。きっと誰かがいる。
きっと誰かが………俺を待っていてくれるはずなんだ。
………………。
………。
覚悟を決めて、保健室の扉を開く。
赤く非常識なくらいに夕陽が乱反射する廊下に足を伸ばして、俺は徘徊を始めた。